永源寺と寂室元光師の禅
永源寺は、寂室元光師を近江の守護職佐々木氏頼が招請し開山した。現在は臨済宗永源寺派の総本山であり、東近江の名刹である。
詳しくは永源寺HPをご覧ください。永源寺の由緒、開山禅師として寂室元光についても良く分かります。
寂室元光師の禅風
浪本澤一元跡見女子大教授の書いた「林下の禅者 寂室元光」
寂室師についての本はいくつかあるが、その中でも最もその風を記しているのが、芭蕉の研究者として有名な勝山出身の浪本澤一元跡見女子大教授の書いた「林下の禅者 寂室元光」であろう。
寂室師についての本はいくつかあるが、その中でも最もその風を記しているのが、芭蕉の研究者として有名な勝山出身の浪本澤一元跡見女子大教授の書いた「林下の禅者 寂室元光」であろう。
・禅は僧侶だけのものではなっく、寂室の法属には在家の人々も交わっていたのである。
・寂室は遺誡の中で禅は僧侶を問わず各人の日常生活裡に原点を持つものであることを説き、・・・、各人がそれぞれの職分に励み、その生活の中で自らの禅を修証せよと説示したのである。
・終世、名利を求めず、貧を憂えず、貴顕に近づかず、仏法の極意を身証することを僧としての本道とした。いうところの林下である。
・芭蕉の「幻住庵記」の「幻住」の根源は寂室の参じた中峰の「幻住」に発している。と記している。高弟其角の書いた「芭蕉翁終焉記」の文中、「遺骨を湖上の上の月にてらす」の語には、寂室の偈頌の薫染が感受される。
・芭蕉の「幻住庵記」の「幻住」の根源は寂室の参じた中峰の「幻住」に発している。と記している。高弟其角の書いた「芭蕉翁終焉記」の文中、「遺骨を湖上の上の月にてらす」の語には、寂室の偈頌の薫染が感受される。
天竜寺(足利尊氏開基 夢窓疎石開山)や建長寺(足利時頼開基 蘭渓道隆開山)からも招請されるが辞退する。
寂室元光禅師が残した墨跡、詩・偈
寂室の筆跡には、独特の力と美しさがある。
遺墨の中でも、その禅の境地を詠んだ「風撹飛泉」[ふうかくひせん] の詩を自書した墨跡はとりわけ美しい
。
寂室元光禅師が残した教えは
永源寺に住した寂室禅師のもとに修道の道を求めてきたものは2000人と言われる。禅師が残した遺誡の中、所領も返し、そのぞれの道を歩むように。永源寺に残りたいものは残ってもよいと言われた。その後永源寺は、応仁の乱のころには京都五山の名僧がこの地に難を避け修行し、"文教の地近江に移る"といわれるほど隆盛をきわめた。その後は度重なる戦乱で衰微するが、江戸中期、一
絲文守禅師(仏頂国師)が住山し、後水尾天皇の帰依を受け再興された。
寂室禅師の教えた禅は、当時の僧侶のみならず、在家の人々にも多くの影響を与えたであろうことは明らかである。禅と茶道の結びつきから侘び寂えんとよびの文化や、禅が多く武士の精神修養の道として取り入れられていたことから武士道などの形成にも大きな影響を持っていたことは想像に難くない。
儒学や浄土教と寂室の禅
寂室師が師事した中峰明本師が「教禅一致」や「禅浄一体」を教えていたことから、当然ながら儒教や浄土教との調和を教えていたことは間違いないであろう。寂室師の禅は「念仏禅」とも言われていた。
禅と陽明学
近江といえば熊沢蕃山の師中江藤樹の生まれたところであり、熊沢蕃山が弟子の礼を持って学んだところである。中江藤樹が禅を学んだという記録は見当たらないが、何らかの影響があったことは間違いないであろう。
中江藤樹が蕃山に教えた「心法」は禅の教えに類似している。藤樹先生の教えの背景に寂室師の残した善の教えがあるのでは?
禅と陽明学のつながりは深い。
・安岡正篤師も「禅と陽明学」の中でその類似性を語っている。
・王陽明自身が禅を学んでいた。王陽明は何度か科挙の試験を受けているがその途中禅を学んでいる。(「達磨と陽明」惣滑谷快天-ぬかりやかいてん 曹洞大学林長、駒澤大学学長)
「達磨を仏門の王陽明とすれば、王陽明は儒門の達磨である。何となれば達磨の宗風と、王陽明の学風とはその直截簡易なる点において、またその切実なる脩為の工夫において極めて近似しているのみならず、その唯心なる点においてあたかも両手両眼のごとく互いに酷しょうしつつある。されば禅学は仏教の陽明学にして、陽明学は儒教の禅学なりというも決して侮言ではない。」(同上)
・山田方谷先生が幼いころ師匠の丸川松隠に学んだ新見荘には現在も永源寺派の禅寺が多い。
・山田方谷先生が京都遊学中、禅を学んでいた。この当時寂室の禅に傾注していた。
寂室元光禅師は表向きの名声や名誉は一切求めずひたすら林下の禅に励んだ。其の故かその名を知る人も多くはないが其の残した業績の大きさは比類なきものであると思う。日本の精神文化の基本を作った功績は極めて大きいといわざるを得ないであろう。その精神性の高さを顕彰しながら、その良き精神伝統を引きついていきたいものである。
2013.3.15
山田良三
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